天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー目(3/9)

  いや高くあがりゆく雲雀(ひばり)眼はなさず君の見ればわれはその目を見るも

                        川田 順

  こころみに眼とぢみたまへ春の日は四方に落つる心地せられむ

                        前田夕暮

  海底(うなぞこ)に眼のなき魚(うを)の棲(す)むといふ眼の無き魚の悲しかりけり

                        若山牧水

  わが目のなかに小さき指をつきこみて柔らかに児の撫でむとすなり

                       五島美代子

  左の目亡き子を泣けど右の目は生ける子一人まだ見るものを

                       五島美代子

*亡き子: 東京大学文学部在学中に自死した長女ひとみのこと。

 

  眼も鼻も潰(つひ)え失せたる身の果にしみつきて鳴くはなにの虫ぞも

                        明石海人

*周知のように明石海人は、25歳でハンセン病を発症。病は、失明、喉頭狭窄による気管切開と確実に死に向かって進んだ。37年の生涯であった。

 

  昼の床に眼(まなこ)をとぢて落着けどなほ鎚(つち)の音の忘れかねつつ

                        松倉米吉

 

[註]何度かコメントしているが、シリーズに添付している参考画像は、WEBから借用。サイズ上の制約から、トリミングしたり縮小したりしている。関連の短歌を鑑賞する際に参考になればよいのだが。

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雲雀