天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー目(5/9)

  むらがりてたゆたふ鷗窓に見え今日も朝より眼は充血す

                        近藤芳美

  口荒く出でゆく夫よあはれ背にわれの憎悪の目を貼りつけて

                       中城ふみ子

*夫たる者、十分に承知しておくことが肝要! というまでもないか。

 

  両の眼の盲(し)ひるくらやみいかなれば子は父よりも罪ふかしとぞ

                        前登志夫

  いたむ目に冷たき指をあてて思ふいひわけはきかれぬかもしれぬ

                       石川不二子

  病む吾子に年祝(ほ)ぎの箸をもたしめてまなこぬれゆくわれも吾妻も

                        木俣 修

  校正につかれたる目をいたはると目とぢつつ聞く渓の水(み)の音(と)を

                       佐佐木信綱

  瞑目しふいに瞠(みひ)らく若き眼に射すくめられきわれも女艶歌師(アルメ)も

                       春日井 建

  右の眼は顔も見えずという妻に立ち居の手をばとる日もあらん

                       窪田章一郎

*夫婦ともなれば当然のことだが、愛情の発揮どころであろう。

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女艶歌師(WEBから)