天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー目(6/9)

  畳の上にごろりころんで眼をつぶる下界遮断の手段(てだて)とばかり

                        筏井嘉一

  目のかぎり展く起伏に人住みてそのことごとく地番を享けをり

                        小野茂

  朝早きニュースに告ぐる気圧配置かかる俯瞰の眼を誰が持つ

                        小野茂

*人間の眼には見えない科学的計測の結果が気圧配置として図案化して表示される。

 

  黄のガラス透きて向うをゆくかげの歪むとき茶房の奥のわれの眼

                        吉野昌夫

  吾子の目がフリイジアのごと憫笑す手を引きてゆく日のすぎたれば

                        前川 緑

*子供が小さい頃は、手を引いて歩いていたのに、その子が大きくなれば、もはや手を引くことはない。その寂しさを子供が察知しているようだ。

フリイジアの花言葉は、色によって異なる。白はあどけなさ、黄は無邪気、赤は純潔、はあこがれ、淡紫は感受性を表す。

 

  気負いつつもの言う人の眼を見れば言葉はかなし言葉は恐ろし

                        橋本喜典

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フリイジア