天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー肩(2/2)

  肩厚きを母に言ふべしかのユダも血の逆巻ける肉を持ちしと

                      春日井建

*なんとも難解。歌の背景を知りたい。

 

  蝶の粉を裸の肩にまぶしゐたりわれは戦火に染む空の下

                      春日井建

*上句の目的は、裸の肩が冷えないようにするためであったのか? 不可解。

 

  荒あらと肩をつかみてひき戻すかかる暴力を愛せり今も

                      河野裕子

  肩で風切りてあゆめば地平線ゆれつついつの日にもひとりか

                      村木道彦

  つくえの灯ともさむとして撫肩のやはらなりしをいま思ひ出づ

                       篠 弘

  指輪はめてさへ肩の凝(こ)るわがからだ長き歳月苦しく保つ

                      佐藤志満

  その狭き肩幅ほどの過去ひきて軽羅の少女さざめきわたる

                     武下奈々子

* 軽羅: かるいうすもの。うすい絹布、紗(しゃ)、絽(ろ)など。

 

  いつの日か殺してやらむと思ひしが駅へと肩をならべてきたる

                      上田一成

f:id:amanokakeru:20210912065446j:plain

指輪