天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー背(2/2)

  胸郭の内側にかたき論理にて棍棒に背はたやすく見せぬ

                     岸上大作

*日頃の政治運動からできた一首。

  さみしさをあらはにみせてゐるだらうわたくしの背(せな)をみないで欲しい

                    岩田記未子

  ぽきぽきと背骨を折らばすがしからむ何にあらがひてきたるわが生(よ)か

                     仲 宗角

  われの背へからだあずけて眠りたる幼き重み梅咲けば恋し

                     松平盟子

  母の背を幾度も擦り帰りたる真夜はその手を温(ぬく)めてねむる

                     浦上光子 

  背(せな)硬くひと遠そきし日のやうに乾きはじめてゐる水溜り 

                    田村美智代

*上句と下句の直喩による対比が独特。

 

  抱きながら背骨を指に押すひとの赤(あか)蜻蛉(あきつ)かもしれないわれは

                    梅内美華子

  しばしばを背比べしに来しひとりもう来ずわれを抜きさりてのち

                     大松達知

*抜き去ったのは、背の高さだけではなさそうだ。

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赤蜻蛉