天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー脳(1/2)

  脳の真中に薄明の谷ありありと ひるのまどろみ ゆふのまどろみ

                         葛原妙子

*まどろんでいるときの脳内の状況を想像した。

 

  夜ふけて脳をついばむ月よみのさびしき鳥よ爪きらめかせ

                         前登志夫

*月夜に得物の脳をついばんでいる鳥の状態を詠んだ。

 

  冬の浮標(ブイ)を眺めておりぬわが脳が帯電をするまで動かずに

                        佐佐木幸綱

*次の動作に移ろうと思うことを、「脳が帯電をする」と比喩した。

 

  白タイル踏めばたちまち脳髄をのぼりきたれり結晶世界

                         雨宮雅子

*白いタイルで敷きつめられた情景を結晶世界と表現したのだろう。

 

  原爆もスペースシャトルも一塊の柔かき質量(マッス)これなる脳より

                         工藤邦男

*原爆もスペースシャトルも、もともと人間の脳が考え出した柔らかなもの。

 

  眼の奥の脳をおもへりこのごろは鏡の中に脳をおもへり

                         河野愛子

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スペースシャトル