身体の部分を詠むー喉(1/2)
「のど」を上代には「のみど」と言い、奈良時代の文献でも「喉・咽」を「のみど」と読ませている。「のみど」の「のみ」は「飲み・呑み」、「と」は出入り口を表す「と(門・戸)」で、呑むための入り口の意味と考えられる。(辞書から)
日の下に妻が立つとき咽喉長く家のくだかけは鳴きゐたりけり
島木赤彦
*くだかけ: 鶏の古名。「くたかけ」とも。
山にゐるわれの心は幽かなり笹の葉の露に咽喉(のみど)をうるほす
島木赤彦
生ける魚生きしがままに呑みたれば白鳥のうつくしき咽喉うごきたり
真鍋美恵子
われを呼ぶうら若きこゑよ喉ぼとけ桃の核ほどひかりてゐたる
乾葡萄喉より舌へかみもどし父となりたしあるときふいに
植物の白い茎のやうに少年が夜の空指せばその咽喉やさし
生方たつゑ
固きカラーに擦れし咽喉輪のくれなゐのさらばとは永久(とは)に男のことば
*上句の状態の男性を見ることは、現代では無理だろう。ある時代のカッコイイ男を髣髴とさせる。
ゆふ海の渚にきみはをみなゆゑ喉ほそくいづるこゑをかなしむ
熱の喉(のみど)下りてゆける水の音生あるものはついに飲み干す
濱田陽子
*喉が熱いとは、風邪をひいたのだろう。