天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー額(2/2)

  蒼ぐらく空よりくだる雪片を人恋ふるがに額(ぬか)にうけゐる

                        樋口美世

  ライター燃ゆる闇の束の間見し額ひろくかがやきゐしを忘れず

                        大塚陽子

  矜りかに孤立しをれどわが額(ぬか)に触れしは誰ぞ雪のあかつき

                        三國玲子

  まなかひを白き手首の行き来して昼ひそやかにわが額(ぬか)剃らる

                        安田純生

*散髪で顔面を剃られる場面。

 

  生きてあること選ばれてあることとおもふ額に日が当たりをり

                        稲葉京子

  樹液の昇り聞かむと幹に耳寄するひとの額のほのかに光る

                        北浦輝彦

  わが額の生へ際に残る傷一つ産みくれし母の苦しみの跡

                        佐藤祐禎

*生まれた時から額の生へ際に傷が一つあったのだ。結句が悲しい。

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