身体の部分を詠むー頬(1/2)
頬(ほ)よすれば香る息はく石の獅子ふたつ栖むなる夏木立かな
*上句が詩的工夫といえる。
頬の肉落ちぬと人の驚くに落ちけるかもとさすりても見し
長塚 節
頬(ほ)につたふ/なみだのごはず/一握(いちあく)の砂を示しし人を忘れず
*石川啄木の第一歌集『一握の砂』の代表歌。
わが妻となるべきひとは豊頬(とよほほ)のただ笑(ゑ)むのみにかたはらにあり
岡野直七郎
*妻の理想像を詠ってみた。
おのづから頬ゆるむまでこころたのし庭木にむつむ山鳩ふたつ
今日一日心くるしみゐし吾の頬伝ふまで目薬をさす
富小路禎子
森駈けてきてほてりたるわが頬をうずめんとするに紫陽花くらし
はじめての炭火が部屋に来る瞬時やさしきものを頬に感じる
高安国世
*誰もが経験することだろう。