天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー唇(4/4)

  くちびるに色あはくさすおもかげは夢すらにいつも、いつまでも泣く

                      成瀬 有

  美人にはならないだろうでもピザのチーズのように笑う唇

                      広坂早苗

*下句の直喩は、解説が難しいだろう。

 

  くちびるはわづかに開く表情に今が零れるやうな体温

                     尾崎まゆみ

*体温が高くなった時の表情をとらえている。

 

  柚子の香の残れる口があっと言う夜のくちびる小さく開けて

                     佐佐木幸綱

  これがおまへの誠意と思へばたのしくて異議を唱ふる唇の張り

                      矢部雅之

*下句の情景を上句の内容に解釈している。

 

  唇は春の濡れ色フルートを吹く青年が息継ぎのとき

                    蒔田さくら子

  くちびるはつめたく触れて葉をおとす幹のよろこびを教へてくれる

                     魚村晋太郎

*なんとも敏感な感性の持主のようだ。

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ピザのチーズ