身体の部分を詠むー乳房(5/6)
産むことを知らぬ乳房ぞ吐魯番(トルファン)の絹に包(くる)めばみずみずとせり
*作者には『吐魯番の絹』という散文集もある。一度結婚したが、DVに会い離婚した。
夕ぐれは青みなぎれる乳房もつしばし風生む樫の木下に
佐伯裕子
右乳房あらぬを冬は忘れゐて桜みるとき感覚ありき
雨宮雅子
乳房ふたつ横むきに寝てわれとちがふ考へごとをしてゐるやうな
垂れこむる冬雲のその乳房を神が両手でまさぐれば雪
*冬の空に垂れこめる雲を見上げての想像。
袖口を濡らせばじわじわ伝ひくる寒のきはみは乳房ふるはす
南 静子
精悍なる乳房なりしがずつしりと歳月をはらみわが掌(て)をこぼる