天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人・人間を詠む(1/7)

 人(ヒト)とは、学名がホモ・サピエンスとされている動物の和名である。

漢字は人が立って身体を屈伸させるさまを横から見た形にかたどる象形文字。人間とも言う。場合によって次のようにいくつもの意味をもつ。

➀ひと。にんげん(人間)。「人権」「人情」「隣人」 ②ひとがら。性質。「人格」「人品」 ③ある職や分野に属するひと。「歌人」「経済人」「英国人」 ④ひとを数える語。「一〇人」

(辞書による)

 

  古(いにしへ)の人にわれあれやささなみの故(ふる)き京(みやこ)を見れば悲しき

                     万葉集高市古人

  人は皆今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも

                   万葉集・園臣生羽之女

*「人は皆もう長いので束ねなさいと言うけれどあなたが見た髪ですもの、たとえ乱れても(他の人のために束ねたりはしません)」

 

  人はよし思ひ止(や)むとも玉(たま)鬘(かづら)影に見えつつ忘らえむかも

                     万葉集・倭姫皇后

*「他の人はやがてあきらめてしまうのは仕方がないでしょう、でも私には美しい玉鬘のように天皇のお姿が目に見えて忘れることなどできないのです。」

 

  うつそみの人にあるわれや明日よりは二上山を弟世(いろせ)とわが見む

                     万葉集大来皇女

  古(いにしへ)の七(なな)の賢(さか)しき人どもも欲(ほ)りせしものは酒にしあるらし

                     万葉集大伴旅人

  紅(くれなゐ)に衣(ころも)染(し)めまく欲(ほ)しけども着てにほはばか人の知るべき

                     万葉集・作者未詳

  秋山をゆめ人懸(か)くな忘れにしそのもみち葉(ば)の思ほゆらくに

                     万葉集・作者未詳

*「秋山のことは決して口に出して言わないで。忘れていたあの黄葉のことを思い起こしてしまうから」。

懸く: ここでは、「口に出して言う」こと。

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二上山