人・人間を詠む(2/7)
うち日さす宮(みや)道(ぢ)を人は満(み)ち行けどわが思ふ君はただ一人のみ
万葉集・柿本人麿歌集
巻(まき)向(むく)の山辺とよみて行く水の水沫(みなわ)のごとし世の人われは
万葉集・柿本人麿歌集
磯城島(しきしま)の日本(やまと)の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ
万葉集・作者未詳
帰りける人来(きた)れりといひしかばほとほと死にき君かと思ひて
万葉集・狭野弟上娘子
ふたほがみ悪(あ)しけ人なりあた病(やまひ)わがする時に防人(さきもり)にさす
万葉集・大伴部広成
*「ふたほがみは悪い人だよ。急な病でわたくしがつらい思いをしているときに防人に指名したのだよ。」
ふたほがみ: 語義未詳だが、意地の悪い人、二心ある人をさすか。
あたやまひ: 急病。
防人(さきもり)に行くは誰(た)が背(せ)と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思(もひ)
もせず 万葉集・防人の歌
鳥翔成(つばさなす)あり通(かよ)ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ
*「翔る鳥になって皇子は常に飛び回りながら見ておられるが、われわれ人には分からないけれど、松は知っていることだろう。」