人・人間を詠む(3/7)
里はあれて人はふりにし宿なれや鹿もまがきも秋の野らなる
吉野川いはなみたかくゆく水のはやくぞ人を思ひそめてし
*上句は、下句の「はやくぞ」の序詞になっている。
人はゆき霧は籬に立ちとまりさも中空に眺めつるかな
ありま山ゐなのささ原かぜ吹けばいでそよ人を忘れやはする
*上の句全体は、下句の「そよ」という言葉を引き出すための序詞。
「有馬山の近くの猪名にある、笹原に生える笹の葉がそよそよと音をたてる。まったく、そよ(そうよ、そうですよ)どうしてあなたのことを忘れたりするものですか。」
常よりもはかなき頃の夕暮はなくなる人ぞ数へられける
恋せずば人はこころもなからましもののあはれも是よりぞしる
諸共(もろとも)にかげをならぶる人もあれや月の洩(も)りくる笹の庵(いほり)に