天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人・人間を詠む(3/7)

  里はあれて人はふりにし宿なれや鹿もまがきも秋の野らなる

                      古今集遍昭

  吉野川いはなみたかくゆく水のはやくぞ人を思ひそめてし

                     古今集紀貫之

*上句は、下句の「はやくぞ」の序詞になっている。

 

  人はゆき霧は籬に立ちとまりさも中空に眺めつるかな

                        和泉式部

  ありま山ゐなのささ原かぜ吹けばいでそよ人を忘れやはする  

                   後拾遺集大弐三位

*上の句全体は、下句の「そよ」という言葉を引き出すための序詞。

「有馬山の近くの猪名にある、笹原に生える笹の葉がそよそよと音をたてる。まったく、そよ(そうよ、そうですよ)どうしてあなたのことを忘れたりするものですか。」

 

  常よりもはかなき頃の夕暮はなくなる人ぞ数へられける

                   後拾遺集藤原頼宗

  恋せずば人はこころもなからましもののあはれも是よりぞしる

                        藤原俊成

  諸共(もろとも)にかげをならぶる人もあれや月の洩(も)りくる笹の庵(いほり)に

                      山家集西行

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吉野川