天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人・人間を詠む(6/7)

  赤の他人となりし夫よ肌になほ掌型は温く残りたりとも

                       中城ふみ子

  「にんげん」と平仮名で書くなまなまと温くこのいとほしきもの

                        松岡裕子

  グリセリンいと甘ければ医薬にも火薬にもなる人間がなす

                        喜夛隆子

グリセリン: 三価アルコールの一(化学式C3H8O3、)。無色で甘味を有し、吸湿性をもつ粘りけのある液体。油脂の構成成分。医薬・化粧品・爆薬原料などに利用。グリセロールとも。(辞典による)

 

  人はすべて己(おの)れの外(そと)に住むといふ入り日にむかふしづかなる時も

                        岡井 隆

  人間の見えざる奥処闇(あん)臓(ぞう)と呼ばるる臓あり常にぬらめく

                        大下一真

  アフリカゆただ一種の人地に満てり不思議なるかなホモサピエンス

                       松浦のぶこ

ホモサピエンス(知恵ある人): およそ20万年前にアフリカで誕生し、世界中に分布したヒト属の1種。

 

  手(て)鰭(びれ)にて潮をしたたくさま見れば鯨も人もひとつ世(よ)の生(せい)

                        秋葉四郎

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