天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

人・人間を詠む(7/7)

  夕つ方にんげんとなる刻(とき)がきて僧は雨傘さしていでゆく

                     前川佐重郎

  にんげんの為すことおほよそ虚しくて馬うつくしく走らせなどす

                      成瀬 有

  人間はみな化け物なり家の中にありてさへ沁みておもふときある

                      小池 光

  人間はもののはづみにドロップの缶の出(で)穴(あな)をのぞくさへする

                      小池 光

*ドロップ: イギリスでは初め、砂糖煮にしたプラムを小さい球状にして砂糖をまぶしたものをドロップといっていたが、のちに砂糖だけでつくるようになった。日本へは宝暦年間(1751~1764)に伝わった。(辞典による)

 

  人間ができるまで十七年か七十年かは人によりけり

                      小池 光

*「人間ができる」をどう定義するかで、年数は違ってくる。十七と七十の表記を愉しんでいるようだ。

 

  生涯に七億回ほど息をつくニンゲンらしくあってもなくても

                   さいとうなおこ

*人の1日の呼吸回数はおよそ2万~2万5000回という。80歳まで生きると6億~7億回ということになる。

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ドロップの缶