天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳥のうた(2/12)

  鳥ならばあたりの木々にかくれゐてほれたる声に我が泣かまし

              古今和歌六帖・よみ人しらず

  絵にかける鳥とも人を見てしがな同じところを常にとふべく

                   後撰集・本院侍従

*「絵に描いてある鳥であるとあの人を見たいものだ。同じ所(私の家)をいつも訪うように。」

 

  夏刈(なつかり)の玉江の葦をふみしだき群れゐる鳥の立つ空ぞなき

                  後拾遺集・源 重之

  夜をこめて鳥のそら音ははかるとも世に逢坂の関はゆるさじ

                  後拾遺集清少納言

*そら音: 鳴きまね。  はかる: だます。  よに: 決して。

「夜がまだ明けないうちに、鶏の鳴き真似をして人をだまそうとしてもこの逢坂の関は決して許しませんよ。(だまそうとしても、決して逢いませんよ)。」

 

  関の戸を鳥のそら音にはかれども有明の月はなほぞさしける

                       藤原定家

*鳥のそら音: 鶏の鳴き真似。

 

  さだめなく鳥や鳴くらん秋の夜の月の光を思ひまがへて

                     山家集西行

*「鶏が落ち着きなく鳴いているのは、秋の夜の月光を夜明けと間違えているからだろうか。」

f:id:amanokakeru:20211115065216j:plain

逢坂の関