鳥のうた(3/12)
けふもまた垣根のうばらつたひ来て霜ふむ鳥の跡はありけり
望月長孝
*うばら: とげのある植物のこと。いばら(茨)。
むらぎものこころたのしも春の日に鳥の群がり遊ぶを見れば
*むらぎもの: 「心」の枕詞。
たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴きしとき
橘 曙覧
ゆれなびく萩のたり枝のかすりゐる砂清くして小禽(ことり)の足あと
吉植庄亮
鳥一羽けしき音たてて歩きをり雨にあけたる浮(うき)桟橋(さんばし)を
石榑千亦
*けしき音: 騒々しい音。 雨にあけたる: 雨のうちにあけた朝
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外(と)の面(も)の草に日の入る夕(ゆふべ)
野の鳥よ古(ふ)りし廂(ひさし)にうたひては父笑(ゑ)ましぬる朝もあるべし
窪田空穂