天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳥のうた(7/12)

  鳥はいやしき同情者たることなけれ人なぐさめてゐるわがあはれ

                       三井ゆき

  きららかについばむ鳥の去りしあと長くかかりて水はしづまる

                       大西民子

*ついばむ鳥と水との関係が分からないが、見たままの情景を詠んだのだろう。

 

  真っ黒な卵を一個産みにしが卵も鳥もゆきがた知れぬ

                       大西民子

  しばしばも鳥はめつむる血肉とならざる砂を砂嚢につめて

                      緒方美恵子

  取りつく樹定めし鳥が空中に羽根の力を抜くかたち見ゆ

                      花山多佳子

  日もすがら穂絮(ほわた)を抱(いだ)く野の鳥のありとし聞かば寄らましものを

                       内田紀滿

*日もすがら: 朝から晩まで。一日じゅう。

 

  おとうとよ忘るるなかれ天翔ける鳥たちおもき内臓もつを

                       伊藤一彦

  ひそやかにあきらかに空渡りゆく鳥の羽音の地には落ちこず

                       伊藤一彦

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鳥の卵