鳥のうた(9/12)
薄にごる気圏をよぎる鳥のむれこぼせる声は土にとどかず
押山千恵子
* 気圏: 地球の大気が存在する高度一〇〇〇キロメートルくらいまで範囲。
暮れあしを早める鳥の影は増しいちもくさんの森のふところ
村山美恵子
*いちもくさん: 一目散(わき目もふらずに目的地まで行くようす)
ひと目見る意の「一目」と、漢語の「逸散(いっさん)」そして、わき見をしない意の「一目不散(いちもくふさん)」から成ったとの説あり。
朝庭に羽瑠璃色の鳥来たるただそれだけを告げたきものを
秋山周子
やすらぎのなきことを地に庇いあい鳥はひろげる大雨覆(おおあめおおい)
*雨覆(あまおおい)は風切羽の基部をおおっている羽毛で,翼上面の上雨覆と下面の下雨覆との区別があり,上雨覆は初列雨覆,大雨覆,中雨覆,小雨覆に分けられる。
貧しかることば尽くして詠はむに木末(こぬれ)の鳥に「虚(きよ)虚(きよ)」と
鳴かるる 羽生田俊子
ひと一人過ぎたる家に冬日さし野の鳥は来る去年(こぞ)の水場に
山本かね子
日日のくりかへしのなか心臓のつと止まるとき鳥なども墜つ
森岡貞香