天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

祖父、祖母を詠む(5/6)

  うすれゆく記憶にしろき霜の花ひかるやふいにわらいだす祖母

                         広坂早苗

認知症の症状であろう。誰もがいずれ経験するはず。

 

  おほははの皺ふかき顔にまなこといふ二つしづかなみづうみがある

                         小谷陽子

  祖母よりの便りひらけば坂下のポストへ向かふ杖の音聴こゆ

                         松本典子

*作者が今読んでいる祖母からの手紙から、祖母がその手紙を投函に向かう姿を想像している。悲しくなる作品!

 

  やがてわれを忘れてしまう祖母といて桜並木の先までを行く

                        後藤由紀恵

  糺したきことばかりなる冬の夜は祖母を捨てたしわれを捨てたし

                        後藤由紀恵

*「後藤の歌の主題は、同居する両親と祖母から構成される家族という舟だ」という

評者もいる。祖母については、

  転倒をくりかえす祖母をささえつつ廊下を歩くわれのスリッパ

といった作品もある。

 

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桜並木