天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

祖父、祖母を詠む(6/6)

  天皇は死なぬと言いし祖母逝きて昭和も逝きてそして十年

                         川本千栄

  ぼんたんを砂糖で漬ける祖母がいていつもうなずく祖父がいるなり

                         小島なお

*ぼんたん: ブンタンのこと。柑橘類の一種。標準和名はザボン

  縦糸は律儀横糸勝ち気にて紬を風のやうに着た祖母

                        米川千嘉子

*紬(つむぎ): 紬糸で織られた絹織物。蚕の繭から紡いで、撚(よ)りをかけて丈夫な糸に仕上げて織ったもの。紬の生地を縫製した和服を指す場合もある。(辞典から)

 

  西の井戸埋めてはならぬといく度も神託のごと祖母の白声

                        春日いづみ

*白声(しらごえ): りきんで出すかんだかい声。日本芸能の発声法の一。一種のしわがれ声で、祭文・浪花節浄瑠璃などの語り物で用いられる。(辞典による)

 

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ぼんたん