天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姉、妹を詠む(2/7)

  繭煮つつゑまふいもうとまへがみのうづゆるやかにわれを殺(あや)めよ

                      塚本邦雄

*結句が唐突すぎて鑑賞困難!

 

  夏の鹽甘し わが目の日蝕といもうとの半身の月蝕

                      塚本邦雄

  姉妹の中にかこみし火桶さへ冷たうなりて夜は更けにけり

                      柳原白蓮

  みごもりし妹はときどき家に来て投げ出すごとく坐ることあり

                      大坂 泰

  しかばねとなりて焼場への坂のぼる始めて天に近づく姉か

                      阿部正路

*しかばね: 「屍」と書き、死体のことを意味する。死者に対する敬意が払われていない表現になる為、現代ではあまり使用されない。

 

  もう姉も遠い三途の河あたり小さな寺のおみくじを引く

                      山崎方代

*三途の河: 死後7日目に冥土の閻魔庁へ行く途中で渡るとされる川。川に緩急の異なる三つの瀬があって、生前の罪業によって渡る場所が異なるという。

 

  かげりゆく畠にかがまる姉の背の藁束は冴ゆ空の明かりに

                      安部洋子

 

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火桶