天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女を詠む(1/4)

 「をみな」の音便形が「をんな」。「め」はおんな・女性の意味から妻を指すことも。児、児ら、をみな子 なども。「をとめ」に当てた漢字には、少女、処女、乙女などがある。

 

  ささなみの志賀津(しがつ)の子らがまかり道(ぢ)の川瀬の道を見ればさぶしも

                     万葉集柿本人麻呂

*「志賀津の少女がこの世を去って行った道――川瀬を辿るその道を見れば、心寂しいことよ。」

 

  泊瀬女(はつせめ)の造る木綿(ゆふ)花(はな)み吉野の滝の水沫(みなわ)に咲きに

  けらずや                万葉集・笠 金村

*「泊瀬の女の造る木綿の花は今、吉野川の浪の水沫に咲いているではないか。」

吉野川のたぎつ白浪の水沫を木綿の花に見立てて詠んだ。

 

  雪の上に照れる月夜に梅の花折りて贈らむ愛(は)しき子もがも

                      万葉集大伴家持

  雄神川(をかみがは)紅にほふ少女らし葦附(あしつき)採ると瀬に立たすらし

                      万葉集大伴家持

*「雄神川の川面に紅の色が映えて匂うように美しい。娘たちが葦付を取ろうと瀬に立っているらしい。」

 

  春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女

                      万葉集大伴家持

  石竹花(なでしこ)が花見るごとに少女らが笑まひのにほひ思ほゆるかも

                      万葉集大伴家持

*「 なでしこの花を見るたびに、少女の笑顔の美しさが思い起こされることよ。」

妻の坂上大嬢を思って詠んだ。

 

  物部(もののふ)の八十(やそ)少女らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花

                      万葉集大伴家持

 

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雄神川