天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女を詠む(2/4)

  あまつ風雲のかよひぢ吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ

                      古今集・良岑宗貞

*「天の風よ、雲の通り道を吹き閉じてくれ。舞う女性(天女)たちの姿をあともう少しだけでも留めておきたい。」 出家後の僧名が遍昭

 

  あまつ風氷をわたる冬の夜の乙女の袖をみがく月かげ

                    新勅撰集・式子内親王

*あまつ風: 宮中を吹き渡る風(内裏を天上になぞらえている)。

乙女: 五節の舞姫を指す。新嘗祭では四人で舞った。

 

  乱れ蘆のくち葉が下をかきわけて難波をとめは磯菜つみけり

                          熊谷直好

  ここにして見ゆる田伏(たぶせ)の一つ家にゐぬとし思ふそのをとめはも

                          太田水穂

*ゐぬ: 往ぬ/去ぬ。意味として去る/死ぬ がある。

 

  髪ながき少女とうまれしろ百合に額(ぬか)は伏せつつ君をこそ思へ

                         山川登美子

  みじかかるこの世を経むとうらがなし女の連(つれ)のありといふかも

                          斎藤茂吉

  君がため瀟湘湖南の少女(をとめ)らはわれと遊ばずなりにけるかな

                          吉井 勇

*瀟湘: 中国湖南省にある洞庭湖に合流して注ぐ瀟水と湘水。

 

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白百合