天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女を詠む(3/4)

  桐の葉に包みとらへし蛾を殺すをみなの指とおこなひを見つ

                          橋本徳寿

  人々の噂を好むをみな子の中に交りてしばらく愉(たの)し

                          山下陸奥

  うつしみは香をともなふと思ふときかなしきまでにちかし処女は

                         上田三四二

*うつしみ: 現し身(現在生きている身)

 

  処女にて身に深く持つ浄き卵(らん)秋の日吾の心熱くす

                         富小路禎子

  女にて生まざることも罪の如し秘(ひそ)かにものの種乾く季(とき)

                         富小路禎子

富小路家は1000年をさかのぼる貴族の家系。作者は、敗戦直前に母を亡くし、社会的な地位を失った父を支えて会社勤めをし、定年まで続けた。やがて父を見送り、結婚はせず、身ひとつの暮らしで歌に励んだ。杉並のワンルームマンションでの孤独死、享年75歳。(webより)

 

 

  苦(にが)きもののみこみて甘き乳となす女の性(さが)をわれも持ちゐる

                         五島美代子

  卵巣を吊りて歩めるおんならよ風に竹群の竹は声あぐ

                         阿木津 英

 

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