天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女を詠む(4/4)

  はじめより女は傷(いた)みに耐ふること勁(つよ)しと言はれつよく耐えきつ

                         真鍋美恵子

  女(をみな)とは幾重(いくへ)にも線条(すぢ)あつまりてまたしろがねの繭と思はむ

                          岡井 隆

  ハスキーに猫を呼びたる女(ひと)のあり性の脆さをいとしめるらし

                          伊藤弘子

*ハスキー: 声がかすれ、しゃがれているさま。

 

  もの言わで笑止の蛍 いきいきとなじりて日照雨(そばえ)のごとし女は

                          永田和宏

*上句と下句を意味上、どのようにつなぐか難しい。

 

  たかがおんなさあれ夜叉とも聖母ともなりて男ら嬲りたるかな

                          岡口茂子

*なぶり: 「嬲り」で、からかったり苦しめたりしてもてあそぶこと。

 

  子を産みて育て働き痴れてゆく女とは淋しき脚に立つもの

                         後藤由紀恵

  をみなとは具体的いきものにしてきみの抽象ある日は憎む

                          稲川信恵

 

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