天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

年月を詠む(1/3)

 歳月、光陰を意味する年月をとりあげる。

 

  年月はあらたあらたに相見れど吾が思ふ君は飽き足らぬかも

                    万葉集・大伴村上

  梓弓春たちしよりとしつきの射るがごとくもおもほゆるかな

                   古今集凡河内躬恒

*梓弓:  アズサの木で作った丸木の弓。弓のつるを引く、または張るところから「い・いる・ひく・はる」にかかる枕詞。

 

  とりとむる物にしあらねば年月を哀れあなうとすぐしつるかな

                   古今集・読人しらず

*「引き止めておけるものでもないので、「ああすばらしい」とか「ああ嫌だ」と言いながら年月を過していることだ。」

 

  玉の緒のたえて短きいのちもてとしつきながき恋もするかな

                    後撰集・紀 貫之

*玉の緒: 玉を貫き通した細ひも。

 

  年月は昔にあらずなり行けど恋しきことは変らざりけり

                    拾遺集・紀 貫之

  数ふれば我が身につもる年月を送り迎ふと何いそぐらむ

                    拾遺集・平 兼盛

*「数えれば、またひと月、また一年と、我が身に積もる年月なのに、それを送り迎えると言って、人は何をこう急いでいるのだろうか。」

 

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梓弓