年月を詠む(2/3)
くさ枕このたびへつる年月のうきはかへりてうれしからなむ
後撰集・読人しらず
*「草枕この旅経つる年月の憂きは帰りてうれしからなん」という読み。
よとともに恋ひつつ過ぐる年月はかはれどかはる心地こそせね
詞花集・一条院
とし月をいかで我が身におくりけむ昨日の人も今日はなきよに
*昨日会った人も今日は亡くなっていないというはかない世の中。その時間の尊さに気づくことなく過ごしてきた自分を反省している。
とし月のつもりはててもそのをりの雪のあしたはなほぞ恋しき
*「年月がずいぶん経っても、その折の雪の朝はやはり恋しく思います。」
年月はとどまることなしこの山の岩に泌み入る夕日の光
島木赤彦
木は石となる年月も恋はむとぞいつはりならぬいつはりをいふ
田波御白
*田波御白: 翻訳、創作等も発表するなど歌人として活躍し始めるが、肺結核を患い平塚の杏雲堂病院での療養を経て、七里ヶ浜の療養所にて27歳で永眠。(WEBから)