わが歌集からー酒類(1/4)
熱燗を注文せしがぬるかりき煮付け南瓜の上の山椒
夕暮れて大台ヶ原に雲湧くも大部屋にひとり飲む缶ビール
妻と酌む麦酒一本新香を噛む音のする鰻屋の昼
一時間余して返すレンタカーくさや焼酎買ひて船待つ
羊肉のしゃぶしゃぶ食ひて白酒呑む木枯すさぶ北京の休日
*白酒: 中国発祥の蒸留酒。宋。代に南方より伝わった蒸留酒を基礎として成立
した。コーリャン、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなど穀物を原料とす
る。アルコール度数が高い(50度以上のもの)ものが多い。
妻老いて梅酒サワーをさはさはと喉(のみど)に流す夕焼けの空
酒飲みしこと悔やみては出勤す月曜朝の駅の階段
螢烏賊子を孕みたる塩辛の柚子香りたつ冷酒の盃
ずんぐりの徳利つかみてひとり酌む歌詠む昼の雪の祝日
百姓が朝(あした)の山に採りにけむ酒の肴の独活(うど)とたらの芽
妻は麦酒われは老酒飲みながら子の話する焼肉の店
青白きグラスあふれて受け皿にこぼるるままにつぐ「美少年」
漬物と鰻と原酒うまき故わが幾たびも来しこの鰻屋に
泡盛はタイの米から作るといふ砂糖黍からと思ひをりしを
豚足にはつか付きたる皮を食み十年ものの泡盛に酔ふ
瀧の汗流せる後の生ビールさより日干しの薄焼きに飲む
酒蔵のおやぢだけしか飲めぬとふ原酒千代菊わが前にあり
忘れ得ぬ飛騨高山の「深山菊」塩舐め聞きし一枡の酒
朝くれば風薬飲み夕されば酒呑む悪しき循環断てず
一缶の麦酒に酔へば口さがなしわが後頭部の禿(はげ)を妻言ふ