わが歌集からー酒類(2/4)
シドニーのマウンドに立つ松坂を熱燗酌みてわが声援す
歳晩の卓に並ぶる酒肴訪ひくる子等を花活けて待つ
山椒とたらの芽添へて香り立つ鯛のあら煮に酌む吟醸酒
吟醸酒一合枡にあふれさす茶髪娘の慣れたる手つき
恋多き母なり愛の欠落を酒が満たせる昼の居酒屋
母恋ひて酒に溺るるユトリロがさまよひて描くパリ裏通り
「晩酌屋久兵衛」の酒器買ひにけりきき酒に酔ふおはらひ町に
「酒のうた」四季折々に選り給ふ酒好きなれば倦まずわが詠む
数ふれば十三首になりぬ「酒のうた」高瀬一誌の選に入りたる
うつすらと肉を残せる骨添へり秋刀魚たたきを前に酒飲む
八頭の大蛇が酒に酔ふごとき大き蘇鉄は支へられたり
あらたまの原酒を酌みて鰻食ふ常連として鎌倉の谷戸
花を愛で湯に身を癒し酒に酔ふさねさし相模の山懐に
処女の水木曽に育ちし虹鱒の刺身に酌める「七笑」かも
*七笑(ななわらい): 長野県・木曽福島にある日本酒の酒造所。明治25年の創業の老舗の日本酒造所で日本酒「七笑」が有名。
枝豆と麦酒を前に話し込む老いたる男女をさな友達
日本の主権危ふき時の間をヴィンテージ見るワイン貯蔵庫
太刀魚の銀の刺身の一片(ひとひら)の旨味極まる雪国の酒
*泡盛: 琉球諸島で造られる蒸留酒。米を原料として、黒麹菌によってデンプンを糖化し、酵母でアルコール発酵させたもろみを単式蒸留器で蒸留して製造する 。
泡盛の泡の由来を聞きゐたり洞に並びて古酒醸す瓶