天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(1/15)

鳥   36首

  胡の歌と思へばかなし水鳥の池に聞こゆる中国演歌

  餌撒けばはしやぎ集ふ水鳥を引き連れてゆく白鳥ボート

  ひとところ笹の葉白く汚れたり杉の木立に何鳥か棲む

  稲妻と雨と激しき夕暮の湖上はたはた鳥一羽飛ぶ

  木に止まり羽ばたく鳥の羽根を透く春の朝日のたふとかりけり

  木の下に枯葉掻き出だす山鳥のかそけき音に春は来にけり

  花咲ける梢に何の鳥の巣か枯木組みたる黒きかたまり

  着水のしぶき立ちたりぎこちなき霞ヶ浦の水鳥いくつ

  夕されば駅の広場のクスノキに何鳥か群るこぼれむばかり

  丈高き篁(たかむら)分けてわがゆけば驚くなかれ山鳥が発つ

  冬枯の山はすがしも梢啄(う)つ小鳥の先に青き空見ゆ

  水鳥の糞がもたらす風邪の菌豚経て人にインフルエンザ

  ぬばたまの黒きしだり尾引きずれり砂場の餌を食むオナガドリ

  百鳥の呼び交はす声公園の木々さまざまの紅葉散らす

  水鳥の浮かぶ水面の漣の光まぶしむ雄島の岬

  川上に向かひて浮かぶ水鳥の下に沈めるゴミのさまざま

  水鳥の一度にぱつと立ちたれば飛沫にけぶる川の葦群

  ひばの木の天辺に啼く夏鳥の声の涼しき姥子温泉

  霧ふかき湖畔の森にさまざまの小鳥啼くなりいのちの朝を

  枯葉しく山路をくれば何鳥か鋭(と)き声あぐるたかむらの中

  手に足に原始の鳥の記憶あり顔は未来の人のかがやき

  如月の雑木林に鳥むれて声にぎはしく春告ぐるなり

  あらたまの朝の光のまぶしさに胸ふくらませ眠る水鳥

  よろこびて若葉の梢を啼きわたる小鳥の群をあかず見てゐつ

  釣針をのみて死にたる鳥あれば塀を立てたり水鳥の池 

  子規庵に小鳥くるらし庭におくミカン輪切のつつかれし跡

  極楽寺白雲木の花ちらす五月の風と鳥の羽ばたき

  木漏れ陽の修験の山に何鳥か声うるはしく秋を告げたり

  白衣(しろきぬ)がふはり浮くかにとび立てり浜にいこへる水鳥の群

  しののめの空とぶ鳥の五、六羽の首の長きはかなしかりけり

  さまざまの小鳥の声をとどめたり白秋童謡館の庭先 

  水鳥のいまだ渡らぬ池の辺はかぼそき声にちちろ虫鳴く

  正月の朝日きらめく池の面に黒くかげろふ水鳥の群

  ひとりとる昼食なれば鉄火巻鳥の照り焼き買ひて帰りぬ

  飛ぶ走る泳ぐいづれか秀づれば種は存続す鳥獣世界

  いつどこに屍をさらす三月のさくらの花の蜜吸ふ小鳥 

 

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