天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(5/15)

鴉(烏)   24首

  ぬばたまの黒馬駈くる戦場に鴉の群が屍ついばむ

  カアカアカア嘴太鴉の飛ぶ駅を貨物列車のワムワムワムワム

  ま直ぐなる岬の松に巣をかけし鴉かなしも潮風に揺る

  コアジサシの雛を襲ひ来東京湾ごみ埋立地ハシブトガラス

  小鰺刺、白千鳥棲む川原の卵を狙ふ嘴太烏

  阿と言ひてこの世始まる阿阿阿阿と鴉は啼きて数を増やせり

  生ごみの収集曜日月、水、金鴉覚えて跳び歩く朝

  「マルフク」の看板裏に高啼ける鴉一羽は子鴉ならむ

  看板に鴉止まりて高啼けり眼科胃腸科歯科肛門科

  置く供物猫と烏が奪ひ合ふしぐるる寺の動物霊塔

  悪食の息吐き出すや苦しげにお辞儀するごと烏鳴くなり

  大楠の梢に烏巣をかけて神しろしめすこの世生き継ぐ

  喧噪を少し離るる公園の紅葉の下に鴉水浴ぶ

  くはへ来しパン屑池に落ちたれば口開く鯉を鴉は覗く

  青年のこぶしに鳩の像あれば翼に鴉二羽きてとまる

  鉄分をふくみて黒き砂浜に何を語らふ鴉の群は

  逝く夏の浜の鴉ら争ひて砂にまみれし死魚をついばむ 

  烏きて浜辺の死魚をついばめば黒き嘴(くちばし)濡(ぬ)れて光れり

  ぬばたまの鴉があまた啼き騒ぐ青きテントの並ぶ木立に

  死者の墓あばくがごとくさまよへば鴉は嗚呼と啼きにけるかも

  横跳びに烏が歩く電線の太きが揺るる秋ふかみかも

  深緑のしげみ騒がすものありてしばらく待てば烏あらはる

  人嫌ひのわが性知るや近づけどまばたくのみに鴉は逃げず

  田起しの済みし田んぼを下に見て鴉呼び合ふ朝日の谷戸に 

 

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