天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(6/15)

鶯(うぐひす)・笹子   21首

  夕暮の雨に桜の散り初めて藪にくぐもるうぐひすの声

  うぐひすの声滴れり山蔭の小栗判官眼洗ひの池

  たたなはる青垣山の花嵐谷戸をころがる鶯の声

  明月院裏山に棲む鶯のしやつくり止まずケッキョケキョケキョ

  をみな三人離婚話をしてをりぬ鶯の啼く明星ヶ岳

  鶯の初音聞きたりまなかひに大湧谷の冠ヶ岳

  人間の進化の果てはうぐひすと夢見て登る山若葉道

  うぐひすの啼く篁(たかむら)の空翔(か)けて燕激しき恋をするかも

  まつられし白峰の宮朝風に恨みやはらぐうぐひすの声

  神ゐます大山の嶺高らかに雌を呼び込むうぐひすの声

  薬師寺の東塔西塔美しき空鳴き渡る鶯の声

  ひぐらしの鳴きやみたれば鶯の声しきりなる宿の裏山

  もののふが敗走したる裏山の木立をゆけばうぐひす啼くも 

  葉桜の山にうぐひす啼きたれば蝮は浅き睡りを眠る

  さみどりの高き梢にうぐひすの影うつろひて啼きにけるかも

  うぐひすの声奥ゆかし霧雨の北鎌倉にみどりしたたる

  なつかしき夏うぐひすの声聞けばいよいよ青む杉の木立は

  さへづりもDNAにて決まるらむウグイス亜科の冬の笹鳴き

  うぐひすの声ひびかへる谷戸の朝定家かづらは白き花咲く

  藪陰をうつる笹子の鋭きこゑに霜柱ふむ里山の道

  うぐひすのこゑけたたまし梢から俣三郎のお家見下ろす 

 

鵯(ひよどり)   17首

  ホバリングして蜜吸へり鵯が無残に散らすさざんかの花

  大楠の梢を洩るる冬の陽に姿は見えぬ鵯の声

  ひよどりの細き嘴舌伸びて桜の蘂を舐めにけるかも

  おだやかに冬の陽が差す絵筆塚木の間を渡る鵯の声

  夕さればいづくに眠る冬枯の山に飛び交ふ鵯の声

  あからひく朝日の杜にひよどりの声たからかに秋をことほぐ

  虫食ひの穴あまたあく弓弦葉のむかうの空にヒヨドリが飛ぶ

  磯釣りの釣果はいかに身をかがめイソヒヨドリは岩場を翔る

  さくら咲く山寺跡にひよどりが残り少なき蜜柑ついばむ

  ヒヨドリの鋭き声に責められてわが落ちつかぬ葉桜の山

  ひよどりの声かしましく鳴き渡るみかん花咲く石橋山に 

  湯に入れば花の木立にひよどりの黒き影見ゆ二羽ゐるらしも

  江ノ島イソヒヨドリの啼く聞けば子の失業の思ほゆるかも

  枝打の終りし杉の木立には日の斑やどりてヒヨドリの声

  空堀にたまれる昨夜(きそ)の雨水に身を清めたり朝のひよどり

  渋柿の熟るるを待つか古民家に朝な夕なの白頭鳥(ひよどり)のこゑ      

  イチローを慕ひてゆきし川崎の道化かなしむメジロヒヨドリ

 

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