わが歌集からー鳥類(8/15)
鴨 13首
漣の沼に浮寝の鴨の群岸辺の鷺は風に吹かるる
足赤き鴨のつがひの居眠れる川中の岩水の越えゆく
水面に顔出す雌を押さへ込み瞬時交尾す青首の鴨
わたり來しはるけき空を思ふらむ鴨の憩へる芦刈小舟
明けちかき遠野の原に目覚めけり野鴨の声のはつか聞こゆる
水草を食みて泳げる池の鴨我との間をつかず離れず
大いなる波紋たちたり朝日さす池の真中に雄鴨水浴ぶ
この池にあかずひと日を暮らすらし朝すぎたれば浮寝する鴨
首を噛み雌の背にのる雄鴨に大声あぐる人の妻はも
朝方の食事終はりて群れをるか鴨の浮き寝の大波小波
枯葦の囲める池の水際に羽根つくろへり二羽残る鴨
まがも二羽ならびて泳ぐ池の面に影もま白きもくれんの花
永福寺跡の発掘をはりたり鴨のあそべる青き庭池
翡翠(かはせみ)の礫(つぶて)よぎれる川の辺にトサシモツケの白き花咲く
大いなる嘴黒く光りたり枝に止まれる朝の翡翠(かはせみ)
いくたびもとび込む池に翡翠は小魚一尾とれず去りけり
池の辺にカメラ構へてたたずめりしぶきをあぐる翡翠の朝
滑川(なめかは)まがりくねれる上流の水面に沿ひてカワセミがとぶ
枯葦の岸にカワセミ飛びこみてまた飛び出づるまでの時の間
翡翠の臙脂の胸毛そよがせて風わたるなり枯葦の池
山間(やまあひ)の池のま中の枯枝にカハセミ一羽首かしげたり
それぞれが撮りし写真を見せ合ひて溜池の辺に翡翠を待つ