天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(9/15)

雀・四十雀   10首

  四十雀水面に映す己が影恋ひて鳴きつつホバリングする

  かしましき雀の群に疎外さる紅梅に来し一羽の目白

  梅の木の直立つ梢(うれ)にとりつきてゆらゆら揺るるふくら雀は

  くさはらに朝の木漏れ日やさしきに雀は白き蝶を追ひかく

  狗尾草(ゑのころ)の尾に飛びつきて何を食む雀せはしくとび歩くなり

  街川の浅き流れに水浴ぶる雀が一羽後から一羽

  ふためきて駅のホームにとびきたる蝉は雀(すずめ)に追はれてゐたり

  ふためきて駅のホームにとびきたる蝉は雀に追はれてゐたり

  バス停のベンチに鳥の糞あればよけて座りぬすずめ啼くとき

  朝日さす芝生に降りし四十雀われを見つめてしばし動かず  

 

燕   10首

  なつかしき声とび交ひて花曇る空に今年も燕飛来す

  泥くはへ飛びくる燕マンションの白き廊下を今年も汚す

  軒下の電力計の上にゐる風強き日の燕のつがひ

  うぐひすの啼く篁(たかむら)の空翔(か)けて燕激しき恋をするかも

  秋川の水面かすめて翻(ひるがへ)るつばめの白き胸毛かなしも

  呆然と海を見つむる篠島の宿の窓辺を燕が過ぎる

  宿に棲む燕なるらむ飛ぶ道は窓辺の空の右から左へ

  海つばめ岩場にとまり囀れる声まぎれなし春の潮騒

  天駈けて来しつばめらをひき留むるみどりまぶしき山間の村

  つれあひを早やも見つけし初つばめ駅の広場を囀りて飛ぶ

 

鶏・チャボ   7首

  鶏を絞むるは難し川の辺に首を捻れど戻せば啼くも

  当直の教師の膳に置かれたり生徒らが飼ふ鶏の卵

  史さんもチャボもうさぎも気配なしいづちゆきけむ赤き板塀

  みすずかる信濃の夜明けひとつ家にうさぎとチャボと老婆目覚むる

  数万年先の地層に現れむここに埋めたる万羽の鶏

  校庭のチャイムの後に鶏の時を告げたりしはがれ声に

  鶏がらのごとき手足のむごければタオルケットを被せて摩(さす)る

 

白鳥   6首

  胸反らし翼広げる白鳥を映す水面や穂高を臨む

  白鳥の伊豆沼に降る春の雪笹漬け漁に沼蝦を捕る

  白鳥の尾羽引っ張る悪童の像の池の面薔薇影揺るる

  白鳥の長旅終はる皆瀬川鳥海山に雪の降り積む

  幾年をみどろヶ池に棲みつける体の重き瘤白鳥は

  湖に連れてこられて友を呼ぶ渡り忘れしオオハクチョウ

 

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