わが歌集からー鳥類(10/15)
孔雀 6首
黒松の太枝(ふとえ)に止まり高啼けりインドクジャクの瑠璃色の首
華麗なる羽根ひろげたるありし日の孔雀の写真小屋にかかれり
礼状は「あそんでくれて、ありがとう」孔雀の棲みし小屋にかかれり
育ちたる雛を親からとりあげし孔雀の檻の静かなりけり
雌一羽雄二羽飼へる檻あれば孔雀の性をしばし思へり
鶴 6首
うちつれて上昇気流に舞ふ鶴のやがて越えゆくヒマラヤの峰
送信機背負へる鶴を追跡の人工衛星地球を巡る
渡り来しインドの沼に送信機背負へる鶴も水を飲みをり
凍鶴が動けぬ朝の湖の氷の上をくるキタキツネ
霧深き釧路湿原丹頂の思慮深げなる歩みなりけり
網越しに春はきたると啼き交はすツル目ツル科ホオカザリツル
啄木鳥(きつつき) 5首
啄木鳥はうらやましきかな木の洞の木霊と共に一生を暮らす
穴あまた開けたる幹に団栗に合ふ穴探すドングリキツツキ
啄木鳥が蓋開けくはふる爪楊枝からくり箱を妻は買ひたり
釈迦牟尼の歌碑に影おく黒松の幹をつつけるひとつ啄木鳥
啄木鳥の音なつかしき森をきて毒(どく)茸(たけ)に会ふ傘のくれなゐ
雉子 5首
山路ゆく郵便バイクを追ひかくる雉子の生ひ立ちかなしかるらむ
目の周り朱にくまどれる雄なればカンムリキジは檻に高啼く
残雪の風の冷たき多賀城趾雉子は短き距離を飛びたり
鉱毒をしづめむとして造られし雉子(きぎす)啼くなる遊水地の原
防風の木立の蔭に安んじて雉子啼きにけり赤黒き貌
鶺鴒(せきれい) 5首
せせらぎの飛石うつる黄鶺鴒水面にふるるその尾かなしも
光圀が米をつくりしご前田の名残りにあそぶセグロセキレイ
朝日さす青菜畑に鶺鴒の跳びあるく見ゆその白き胸
幅狭き鎌倉古道上(かみ)の道ハクセキレイの一羽走れる