天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(11/15)

朱鷺   5首

  野に座る老人の手の小魚をもらひてうれし朱鷺のをさな子

  名を呼べば応ふる朱鷺の声かなし保護センターの金網の檻

  老いてなほ羽の薄桃ほの見ゆる滅びゆく鳥ニッポニア・ニッポン

  億年の朱鷺の歴史を断ち切りし今日も地上に農薬を撒く

  海越えてもらはれきたり産み継げる朱鷺保護センター嘴打ちの音

 

椋鳥   5首

  薄野に雪降りくれば椋鳥の群れてついばむナナカマドの実

  冬枯れの榎にとまる椋鳥もまぶしみて見る菜の花畑

  公園の楠の木立にむくどりのあまた泊まりて冬を逝かしむ

  ビヤクシンの木蔭に開く『父・白秋と私』まぶし椋鳥の声

  ひとときをクヌギの枝にふくらみて朝をまどろむ椋鳥の群

 

目白   5首

  かしましき雀の群に疎外さる紅梅に来し一羽の目白

  湯の郷の早咲きの花咲き満ちて目白とびかふ声のうれしさ

  目白きてデジタルカメラの視野に入る熱海桜の爛漫の中

  イチローを慕ひてゆきし川崎の道化かなしむメジロヒヨドリ

  糸川の熱海桜にメジロきてインスタ映えをわれら狙へり

 

インコ   5首

  軒下に放置されたる自転車の荷台の籠に鸚哥(インコ)さへづる

  片方の風切羽根を切り取られ爪を噛むのみコンゴウインコ

  風切羽根取られたる身を寄せ合へりベニコンゴウとルリコンゴウと

  百歳を生くるインコのともしきろ動物園の坂につまづく

  焼き芋の売り声たかき公園にオカメインコを探す貼紙

 

ペンギン   4首

  赤道の真下に住まふペンギンの祖先はるけしペルー海流

  頭に残る産毛はかなしペンギンの親子を隠すブリザードくる

  呆然と風に吹かるる眉長きイワトビペンギン椰子の木の下

  水槽の岩場に立てるペンギンが壁に描かれし南極を見る

 

葦雀(よしきり)   4首

  荒川とここに分かるる隅田川中洲くさむら葦雀(よしきり)の啼く

  釣り人の一人が持てる釣竿の四、五本並ぶよしきりの声

  よしきりのしきりに啼けるよしはらは風吹くさまになびきたりけり

  啼き声はしきりにすれど見当たらぬ渡良瀬遊水地のよしきりは

 

仏法僧・木葉木莵(このはづく)   3首

  ボッポポウ仏法僧を聞きゐたり梅の木尾根の夜叉節の木々

  良弁が開きて住みし寺の跡仏法僧とふ木葉木莵(このはづく)棲む

  山ふかみとほき世のこと語るらくかそけき声の仏法僧は

 

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仏法僧