天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー樹木(11/11)

  転勤の折にもらひしカポックの若木(をさなぎ)いまは成木となる

  引越しのたびに連れ来しカポックは居間に居場所をもらひて静か

  こどもらと共に育ちしカポックは夫婦のもとに残りて暮らす

  四十年ともに生き来しカポックは夫婦ふたりの心うるほす

  夕光の窓辺に立てるカポックは夫婦喧嘩に小枝を落とす

  樹齢千五百年とぞウイルスに負けてはならぬうすずみ桜 

  満開のさくらははやも散りそむる介護老人施設をかこみ  

  じゆれい千五百年なる大ケヤキその樹皮とりておまもりとせり 

  わが背丈越えて咲きたり江戸の世にオランダから来し朝鮮薊(アーティチョーク)は

  大雨に倒れし杉のご神木千三百年の樹齢終へたり

  青空にあまたの枝をひろげたるヒマラヤスギの歳月を想ふ

  そのかみの森に育ちし楠の木はいま庭園の空にそびゆる 

  根方からヒマラヤスギを見上げたりこの地に生ける長き歳月

  丈高き銀杏のもみぢと黄をきそふヒイラギナンテン空に向く花 

  それぞれの歳月おもふこの森に今年の暮をもみぢせる木々 

  「むくろじ」の手書き立札読みとりて上見あぐれば裸木なりき 

  東海道鉄砲宿の街路樹のみかん輝き希望のごとし 

  一木(いちぼく)に巻きつき枯らし隣木(りんぼく)に枝のばしたり絞め殺しの木は  

  花咲けば命のちから目に見えてハクモクレンの一生(ひとよ)しのばゆ       

  外灯はオオシマザクラの腰のほど点りて照らす根方の道を 

  花ちれば忘れてしまふ庭園の道の辺にある細き海棠 

  外灯を樹下にかかへてそびえ立つ天をめざせる樅の大木 

 

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ヒマラヤスギ