天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー花(2/10)

  棚引ける花の白雲下蔭に黄の水仙の群立ちて咲く

  崑崙花萼苞白く目立ちたれ花は小さき黄の筒状花

  虫来ざる露草の花夕されば雌蕊雄蕊を抱きて萎む

  花咲ける庭の杏に縄掛けてふらここ遊ぶカラコルムの子ら

  来る人に匂ひかがすや山百合の身を乗り出せる石の階(きざはし)

  切り出せる割肌に吹く山の風尾花が触るる白御影石

  くれなゐの爪を開きて踊りゐるテレビの上のカニバサボテン

  をみな三人離婚話をしてをりぬ龍胆咲ける山に憩ひて

  野薊の枯れ残りたる紫が冬日に光る砂利の山道

  沿道に並ぶ椿の散り果てて紅白分かず枯れて重なる

  花種とわが骨混ぜて野に撒けと遺言書くを楽しみとせむ

  新しき花束ありき雪降りし山に古りたる木の墓標立つ

  弥生いまだ寒き日あるを待ちきれず長興山の桜訪ひにき

  誰か言ふ枝垂桜はタランチュラ白き毛深き手足張りたる

  原産は南アフリカ喜望峰初島に咲く極楽鳥花

  日の当たる水面に繁る蓮の葉に倦みたるごとき白き花ある

  高光る日のあまねきに倦みたるか睡蓮あまた欠伸する午後

  顕彰の碑のわだかまる庭内にデイゴは朱き花を散らせり

  廃線の鉄路に沿へる花芒銀の垂り穂が風になびかふ

  ポトマック河畔の桜里帰り外人墓地の春は華やぐ

  仏舎利塔白きが下にくれなゐの山茶花散りて地を明かうせり

  日本人妻と眠れる傍らに「連理の梅」の花咲きにけり

  秋立てる港の見える丘に咲く「ビクトル・ユーゴー」くれなゐの薔薇

  ミセスM・Eランディングとふ睡蓮の高貴なる顔沼に咲き出づ

  ことさらに黒き幹なる不気味さの白き花散る靖国神社

  岩山の蝦夷薄雪草かがみ見る人皆エーデルワイスと騒ぐ

  幾千年星空ながめ進化せし地の星としてイヌフグリ咲く

  切実に縋りてめぐるまはり堂雨やはらかに著莪の花咲く

  何十年に一度花咲き枯死すとふアオノリュウゼツランをうらやむ

  おほかたは老人なりき花散りし靖国神社に柏手を打つ

  砲兵隊陸士同期会輜重隊植樹の花の今盛りなる

  それぞれに蘭の花輪を買ひかくる妻ら華やぐ水上バス

  部屋部屋に妃を棲まはせて夜を待てり白き花咲く夏の王宮

  ふた本の向日葵咲きてみすぼらしビデオレンタル店の外壁

 

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デイゴ