天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー花(3/10)

  歳晩の卓に並ぶる酒肴訪ひくる子等を花活けて待つ

  紅梅の根方に水仙咲きにほふ曽我自修学校発祥の地に

  花咲くと町の知らせを読みにけむ車並べるかたくりの里

  極楽寺坂のトンネル覗き込む山の桜と橋の上の我

  大枝垂桜見に来る見て帰る人のあふるる入生田(いりゆうだ)の駅

  烏賊一夜干とさごしの開き買ふ花見帰りの小田原の駅

  どこの花かしこの花と話しをり箱根花見の媼らのバス

  昨夜降りし雪の残れる城山にうつむき咲けるかたくりの花

  藪椿散る城山に咲き出づる堅香子の花万葉の花

  かたくりの花のまにまに咲きゐたり紛らはしきは猩々袴

  堅香子の花に囲まれしづもれる墓地を羨む翁と媼

  遊行寺のおほき木蓮咲きにけり毎年見るもたふとかりけり

  遊行寺の放生池を鎮めたり影を落とせる白れんの花

  たんぽぽの黄色の花を握りしめ「たんぽぽしやん」と幼子は言ふ

  いつせいに人仰ぎ見る崖上の黄色まぶしきマリーゴールド

  丘の辺に濃き紅を散らしたり山背に揺るる雛罌粟の花

  漱石の鬱を癒せし帰源院桜散りたる後の静けさ

  白、黄色、紫もあり青白き百合の蕾も ふたつ花束

  西行のたどりし道はいかなるや峰を見上ぐるこでまりの花

  水銀を飲みて合はする死期もあり花の下にはあらぬ噂も

  報復とふ言葉安易に使ひたりつゆけき野辺に咲く彼岸花

  三四郎池を巡ればかなしもよアメリカブタクサ黄に輝ける

  葉の先に赤き花弁(はなびら)めくれきて白き蘂出す蟹葉覇王樹

  五平もち串焼きさざえ売る屋台河津桜の土手がにぎはふ

  梅まつり桜まつりと比ぶれば寂しさまさる梅のよそほひ

  発掘を中断したる寺(てら)跡(あと)をまたも覆へる金の穂芒

  法要のかそけき読経の声聞こゆ白梅紅梅蝋梅の庭

  梅林の「一石二鳥」をうべなひて花愛でし後梅エキス買ふ

  古りたれど宝筐印塔隆々と躑躅(つつじ)の花を従へて立つ

  山頂のさくら越し見ゆ人の世の息吹激しき宅地造成

  夜桜の闇の奥処にとどろけり飯山白龍雨乞太鼓

  花を愛で湯に身を癒し酒に酔ふさねさし相模の山懐に

  さくら咲く山の麓の観世音独活一束を買ひて帰りぬ

 

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アメリカブタクサ