わが歌集からー花(6/10)
腰つよく花のおもさに耐へてをりどこか明るきあすかの萩は
がつしりと巌ふまへて小菊咲く日本国香会の盆栽
開花には十日もはやき城跡の桜見上ぐる出張帰り
池の面に静かにたたす観世音はくもくれんの光みちたり
広重の絵に描かれし御油(ごゆ)橋にわが佇めば菜の花咲けり
三分咲きしだれ桜を背に立ちて何をしゃべれる梅宮辰夫
いづくより種のとび来し たんぽぽの黄の花咲けり鉄路の縁に
南国の色おほらかに咲きにけり平戸つつじと霧島つつじ
水色の花に蜜蜂おびき寄せ交配したり矢車菊は
気に留むる人も少なき砂浜にはかな気に咲く浜昼顔は
河骨の黄なる花咲く水の面にきたりてあそぶ朝の光は
宮山の駅のかたへの金網につる巻き咲ける昼顔の花
野に山に向日葵咲かば狂ほしも石油に替はるエタノールあり
カンガルーの尻尾(しっぽ)に似たる花咲けばカンガルー・ポーと名づけられたり
御詠歌の碑のならびたる参道に葛の花ちる秋ふかみかも
ケーブルに電線の束巻きつけて工夫移動す白粉花(おしろい)の上
夕されば彼も宴(うたげ)に加はらむ花咲き満てる靖国の庭
下野の花の横なる賢治の碑雨にも負けず雨に濡れたり
竹藪の竹と背丈をきそひたりゆらりと立てる皇帝ダリア
唐蝋梅素心蝋梅咲き初めて春はま近き谷戸の寺庭
朝明(あさけ)まで降りし初雪つもらざり水玉ひかる蝋梅の花
道なりに咲く水仙を見つつ来し展望台は断崖の上
小田原城常盤木門を出でくれば梅もくれなゐ橋もくれなゐ
さみしさを少しまぎらすごとく咲く寒緋桜は墓地の片隅
大山の方より嵐吹きぬらむ海に向かひて伏せる菜の花
大いなる球根ひとつ鉢植のアマリリス咲く今年五年目