天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー人名(4/6)

     イチロー(続)

  観客の少なきセーフコフィールドは「イチロー・スズキ!」に少しざわつく

  三割をきりし打率のイチローに厳しかりけり地元新聞 

  うたたねをしつつ見てゐるテレビにはイチロー立ちて三振したり 

  二百本安打の呪縛解かれしと明るく話すイチローなれど 

  ピッチャーにバット立てたるイチローの髭面になしかつての自信 

  マリナーズを去るイチローの最終戦エイミーさんの涙とまらず 

  イチローのピンストライプのユニフォーム黒田とともにグランドにあり

  ヤンキースイチローとして立つ打席 セーフコフィールドに拍手充ちたり

  一番ジータ二番イチロー三番がA・ロッドといふ夢のやうなる

  イチローは二塁ベースに帽子とり大歓声にあいさつ返す

  マーリンズの新監督にネクタイを着けてはしやぐイチローあはれ  

  四番目の外野手としてイチローは代打に立ちてヒット打ちたり 

  イチローの二千九百三本目十二対一の一に寄与せし 

  四死球に出でしイチロー生還し日米通算二千得点 

  海を渡り十六年目のイチローの打撃コーチにバリー・ボンズが 

  イチローの先発起用を主張せり小宮山悟はわが代弁者

  イチローの五打席四安打一四球語り継がるるゲームとなりぬ  

  ヒット打ち一塁に来しイチローの肩を抱きけりカブレーラの腕 

  イチローに来しこと告ぐるエイミーさん 「AREA 51」の看板かかげ 

  あと二本マッティングリーはイチローの先発予告を決断したり  

  走攻守むかしと変はらぬイチローも帽子をとれば頭髪白き 

  選球は眼でなく体がなすとして「選球体」とイチローは言ふ 

  イチローを神のごとしと讃へしが海に逝きたりフェルナンデスは

  イチローは事故死のホセに捧げたり代打に立ちて打ちし二塁打 

  メジャーキャリア十七年目にイチローの三千安打の表彰はあり 

  イチローは記念試合にホームランふくめ二安打うれしかりけり 

  イチローの満面の笑みを映したりダグアウトの手摺りの上に 

  五点差の九回二死にイチローを代打におくるマッティングリーは

  声援に迎へられたるイチローの代打三振ブーイング無し

  代打待つ日々が続けば疲れると四十三歳のイチローは云ふ 

  イチローのバットもらって三安打 細く軽きをオスーナは知る 

  ノーヒットなれどセンター・イチローの華麗なる守備歳を感ぜず 

  安打して一塁に出でしイチローがけん制アウト俯きもどる 

  ひさびさに一安打せしイチローにわが晩酌の盃を上げたり 

  イチローの年間代打の打席数MLBの新記録なす

  イチローの二通の手紙が一番の宝物と言ふエイミーさんは

  シアトルを発ちてフロリダ・マイアミへ今年最後のイチローを見に 

  いつの日かシアトルに来るイチローをエイミーさんは夢に見るらし 

 

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セーフコフィールド