わが歌集からー人名(6/6)
松陰の若き気迫のほとばしる真筆を見て背筋正しぬ
松陰も手を合はせけむ本堂の釈迦牟尼仏に吾も手合はす
小塚原回向院より移されし遺骨を想ふ松陰の墓
功なりし木戸孝允が寄進せし鳥居の奥にねむる松陰
松陰に学びし明治の元勲の寄贈の灯籠競ひてならぶ
塾にくる人を待てるか正座して書を開きもつ松陰の像
松陰が泊りし島の弁天堂板戸に四首空穂の歌が
松陰が自首して捕らへられし獄鉄格子のみ今に残りて
大刀を両手につきて沖を見る昭和十七年作松陰の像
松陰の路銀はいかにと案じゐる岬の山の東急ホテル
敗戦忌陽の照りつくる山上に鎧つけたる頼朝の像
頼朝の墓をはさめるマキとタブ茶屋閉ざされて降る蝉時雨
昭和二年頼朝の墓に指定さる槙、椨(たぶ)、楠の囲む石塔
頼朝と政子並びて語らひし月夜に淡き沖のはつしま
頼朝の隠れし窟(いはや)鵐(しとど)とふ鳥飛び立ちて敵くらませり
頼朝が囓りて捨てし渋柿の種は芽吹けり捻り柿といふ
頼朝が白装束に着替へしとふ日向薬師のふもとの衣装場(いしば)