わが句集からー春(3/21)
平成七年
物言はぬ木木に囲まれ暖かき
敷島の大和は杉の花粉かな
鉢抱へ妻の出で立つ初明り
わたつみの初日滴り出でにけり
大仏の胎内ぬくし暗くとも
天草やバラモン凧はうなりあげ
チャルメラに和する遠吠おぼろ月
春の海光あふるる操舵室
白き帆の一列出づる湾の春
雉子鳴くや噴煙高き桜島
式次第打合せゐる花曇
太陽の二つ重なる蜃気楼
春の海恋人岬の鐘が鳴る
つまづきて鴬鳴けり朝の谷戸
梅若忌観光船の子等はしやぐ
カシミヤはモンゴル山羊の春毛かな
水飴や花の下なる紙芝居
菜の花や川の中洲に川岸に
大砲の音に揺るぎし春霞
白河の関よりみちのく揚雲雀
鳥翔ちて老樹の落花はじまりぬ
鮠獲りてアカショウビンはうちたたく
流氷に海豹の仔の瞳かな
仔馬にはまつさらな土北海道