わが句集からー春(6/21)
平成十年
断崖のウミウにのぼる初日かな
顎髭に白きが混じる初詣
校庭の夜の桜を恐れけり
廻縁美濃も尾張も芽吹きかな
野の梅と気付く白さでありにけり
縄跳びの足音そろふ春の風
渦潮の河口に出でし花見船
老木の桜ますます美しき
春一番医者無き里の耳地蔵
僧堂のきざはし無想春の雪
春風の子供とくぐる和合下駄
放生の影のくれなゐ辛夷咲く
夜桜のもののけじみて枝垂れたる
篁にゆたかに触るる桜かな
花散るや鶏(かけろ)長啼く校庭に
つちふるや重く開ける駱駝の眸
藤棚や王朝の風吹き抜ける
晩酌や螢烏賊など肴とし
藤房の風に憩へり裸婦の像
金網を出で入る雀雉子啼く
吊り橋や瀞覗き込む藤の花
遍路道身のうちそとの波の音