わが句集からー春(7/21)
平成十一年
願ひ文芯に込めたる手鞠かな
流れ藻や駿河の海の春濁(はるにごり)
ふる里や年賀交はせる諏訪神社
初明り妻の木彫りの観世音
遊行寺の二日にぎはふ蚤の市
海苔舟の喫水浅く出でゆける
春の海光の布を広げたる
古竹の二本の支へ枝垂れ梅
銅の門をくぐれり梅明り
春光の竹林素直なる心
橋杭岩春あけぼのの仏たち
金星と木星相寄る二月かな
黒松の影がかぶさるクロッカス
夜桜の襲ひ来る夢病みて見し
魚棲める池にも春愁ありにけり
ぜんまいの歯ごたへよろし天下の嶮
しだれたる花に分け入る肩車
春浅し延命長寿の黒卵
流氷のゴマフアザラシ熟睡す
アザラシの揺籃流氷揺れにけり
二合炊く妻と二人の浅蜊飯
里桜散りてなまめく筧かな