天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(14/21)

平成十八年 

     うららかや日ざしに変る海の色

     天地の吹き払はれて淑気かな

     菜の花や雲湧き出づる富士の峰

     立春の光あふるる伊豆の海

     春雨やお百度参りの碑は古りて

     薄氷の下に色あり命あり

     日出づる国初春の神楽かな

     春一番毛羽立つ波の由比ヶ浜

     節分会みな頬張れる恵方巻

     パン屑に雀あつめる春うらら

     お御籤の梢垂れたり春の雨

     啓蟄や鯉の食欲さかんなる

     目が痒い春一番の杉花粉

     山頂に珈琲沸かす春の雪

     流鏑馬の鬣なびく紀元節

     紅雲のたなびく梅の宴かな

     開花まつ庭に軍犬慰霊祭

     咲きみちて堀になだるる桜かな

     花見客どつと笑へり猿回し

     高層の眠りを破る春の雷

     銅像の美髯もかすむ花吹雪

     流鏑馬の人馬一体春の風

     山は不二花はさくらと岩に座す

     浮雲の縁かがやけり山桜

     銅像も誇らしげなる桜かな

     田安門出づればふぶく桜かな

     木の影のまだら模様やさくら餅

     お御籤を桜にむすぶ同期会

     夜桜の吹雪の中や能舞台

     腰を抱く続きを見たし春の夢

     さまざまの花の姿やさくら草

     春光や朝をねむれる虎の縞

     掲示せる遺書にさしぐむ桜かな

     暁の春雷に夢破れけり

     遠くから見るこそよけれ山桜

     水音の谷戸はまぶしや金鳳花

     回遊の鯉の背に降るさくらかな

     うぐひすや谷ひとつ越え如意輪寺

     鎌倉の谷戸の山なみ山桜

     望郷の碑になみだぐむ初つばめ

     まづくぐる花の吉野の発心門

     谷わたる鶯そこに西行

     うぐひすや西行庵へ崖の道

 

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恵方巻