わが句集からー春(15/21)
平成十九年
菜の花や潮目たひらぐ相模灘
蚤の市のぼりはためき春たちぬ
あらたまの富士に白雲巻き立てり
わが影の伸ぶる菜の花畑かな
菜の花や浮世はるけき不二の峰
朝戸出の淡き影ふむさくらかな
発掘の安土城跡春の雪
下曽我やここも車座梅見酒
山門の屋根軽くする初音かな
うららかや大摂心の禅道場
甕出しの老酒に春寿げり
みなピンク春風に鳴るむすび絵馬
春風や拍手わきたつイルカショウ
舎利殿を僧が案内す春うらら
赤煉瓦駅舎出づれば朝桜
門前は匠の市や山笑ふ
うぐひすや水笛を吹くやうに啼く
海棠の花季に会ふ谷戸の寺
信号機鳴りて汽車くる桜かな
断崖の風にあらはる春の鳶
復元の箱根関所や初つばめ
鎧摺(あぶずり)の渚は白し春の潮
湿原に雉の声聞く箱根かな
鶯や羊歯のいのちも盛んなる
椿散って鬱深まりぬ帰源院
相模野や野焼の炎かぎろへる