天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(16/21)

平成二十年 

     初春の光の海の片帆かな

     突堤に添ひて高まる春の潮

     うららかや葉山の沖の真帆片帆

     夜桜や山を出でたるタランチュラ

     初春や砥ぎ師が座る長谷の露地

     風奔る空の高みに春の鳶

     花水木遊行通りに正午告ぐ

     発掘の手を休めたる花ふぶき

     砲撃の演習聞こゆ花吹雪

     鶺鴒の尾のふるる川水ぬるむ

     一身に受けてかなしき花吹雪

     仏殿の軒先に生る雀の子

     藤棚の風にふかるる写経かな

     激つ瀬のしぶきをくぐるつばくらめ

     腰越に朝日子待つや初御空

     あらたまのひもろぎの杜巫女が舞ふ

     松の内七福神をめぐりけり

     初春や若宮大路を人力車

     読経聞く東身延の初えびす

     遊行寺の骨董市は花の中

     菜の花や朝日に伸ぶる人の影

     ひさかたの春日まぶしき象舎かな

     安土城春の雪ふる天守

     立春破邪顕正の弓弦鳴り

     下曽我の女太鼓や梅の花

     ちる花にもつれて飛んで蝶かるし

     たんぽぽや区画にのこす道祖神

 

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タランチュラ