わが句集からー春(16/21)
平成二十年
初春の光の海の片帆かな
突堤に添ひて高まる春の潮
うららかや葉山の沖の真帆片帆
夜桜や山を出でたるタランチュラ
初春や砥ぎ師が座る長谷の露地
風奔る空の高みに春の鳶
花水木遊行通りに正午告ぐ
発掘の手を休めたる花ふぶき
砲撃の演習聞こゆ花吹雪
鶺鴒の尾のふるる川水ぬるむ
一身に受けてかなしき花吹雪
仏殿の軒先に生る雀の子
藤棚の風にふかるる写経かな
激つ瀬のしぶきをくぐるつばくらめ
腰越に朝日子待つや初御空
あらたまのひもろぎの杜巫女が舞ふ
初春や若宮大路を人力車
読経聞く東身延の初えびす
遊行寺の骨董市は花の中
菜の花や朝日に伸ぶる人の影
ひさかたの春日まぶしき象舎かな
ちる花にもつれて飛んで蝶かるし
たんぽぽや区画にのこす道祖神